
HERALBONY ISAI PARK
アリイイリエアーキテクツ
2025 | 岩手県盛岡市 | 押出成形 | 使用面積 140m²
—— 空間自体のデザインコンセプトについてお聞かせください。 また空間内のどのような場所でタイルを使用していますか。
ISAI PARKは岩手県盛岡市にある創業160年の百貨店、川徳の1階に位置するヘラルボニーの旗艦店です。「この場所で20年以上続けていく」という代表の松田兄弟の覚悟を聞き、空間としてこの場所に長く根付くことが肝心だと考えました。内装は、新しい材で刷新してしまうのではなく、45年前の建物竣工時に使われていた床のテラゾーや柱のトラバーチンの表しを基本としました。既に使い込まれた材と共に、新たに長い年月に耐えうる素材として、特注タイルを店舗の主たる壁面で使用しています。
—— 今回制作したタイルについてお聞かせください。 デザインコンセプト、タイルでどのような表現をしようと思ったか、どんな機能をもたせようとしたのか、こだわり部分などご自由にお聞かせください。
20年という期間は通常の店舗内装の寿命の約5倍の時間ですが、何度もリニューアルすることなく、時間が味わいとなることをコンセプトとしています。タイルは濃茶とベージュの二色。全体を単色にまとめすぎず、色鮮やかなアート作品や、今後も様々に展開していくであろう商品を大らかに受け止める「地」としての空間をつくりました。また壁の出隅や腰壁、手が触れる商品の背景など、機能的に劣化しやすい箇所にタイルを使用しています。特にベージュのタイルは、汚れやすい最下段だけ艶のある釉薬で仕上げ、他はマットなものを使用しています。
—— 「タイル」という素材にはどのようなイメージをお持ちですか?
岩手銀行旧本店本館や光原社の中庭など印象的な盛岡の街並みにタイル(岩手銀行はレンガですが)が使われていることが、今回、タイルを使ったもう一つの理由にあります。内装にもタイルを使うことで、竣工時の目新しさがピークでだんだん消費されていくのではなく、昔からあったかのような空気感をつくれないかと考えました。タイルのモジュールは壁面の棚の間隔から決めているので通常のタイルより長さが長く、押出成形なので近くで見ると揺らいだ形の違いがよくわかります。制作のプロセスが形に現れる誠実さと手仕事感が、盛岡の街とヘラルボニーというものづくりのブランドに合うと考えました。
—— タイルにまつわるパーソナルな記憶や思い出などがあれば、お聞かせください。
幼少期の年末年始に遊びに行った祖父の家の浴室の丸いタイルは、祖父の家のイメージと重なってよく覚えています。タイルは同じ材質でも大きさや形によって異なる感覚を生む素材です。タイルが集まってつくられる建物全体の印象と、一つ一つの構成単位であるタイルそのものの印象、という二重性が、他の仕上げと比べてとりわけ顕著な材料だと思います。
—— 実際にタイルを制作してみてご感想をお聞かせください。タイル産地として、多治見の個性や強みといえばどのような点だと思いますか?
サンプル制作においては、色味や艶など、細かな調整に何度も対応いただきました。また、タイルの制作過程を熟知しているスタッフの方とのやり取りはスムーズで、楽しい共同作業でした。実は、最初は盛岡市のタイル製造会社を探していたのですが、どこも廃業してしまったことがわかり、多治見に行きつきました。長い歴史を受け継いだ上で、タイルという材料ならではの微妙な素材感の違いや、これまでとは違った使い方にも対応できる試みとしてTAJIMI CUSTOM TILESにはこれからも期待しています。




